Ocean and Climate Change Lab


研究内容

気候システムにおける海の役割

世界の海の分布

地球の表面積の7割で覆われています.これは太陽系の他の惑星には無い,地球だけの重要な特徴です.海に蓄えられた大量の水は, 海洋を大気よりも1000倍温まりにくく,冷えにくくしています。海は大気からのエネルギーを吸収したり,大気へ放出したりすることで,大気の温度を調節するエアコンの働きをしています.また,海は大気に大量の熱や水蒸気を供給することによって,地球の大気に大きな影響を及ぼしています。大雨や干ばつ,熱波や寒波といった異常気象の原因が海であることも多いと考えられているのです

下の2枚の図をご覧ください.温室効果ガス排出の影響で宇宙空間に射出されずに残存したエネルギーの大部分は海に蓄えられており,蓄えられたエネルギーによって海は徐々に温暖化しています.海に蓄えられたエネルギーは熱と水蒸気の形で今後徐々に大気へと放出され,大気の状態を変化させていくと考えられています

南緯60度~北緯60度の範囲で平均した海面水温の時間変化 (℃).1960-1990年の平均値を基準としている

2022年の海面水温分布.1960-1990の平均値を基準として,その基準値からの差を色で表している (暖色は増加, 寒色は減少)

このようなの変化は気象にどのような影響を及ぼすでしょうか.これまで以上に異常気象が増えていくのでしょうか.さらにこれまでになかったような異常気象が現れるのでしょうか.もしそうだとしたら,それはどのような仕組みで起こるのでしょうか.本研究室では,海の変化が異常気象におよぼす影響とそのメカニズムに関して研究を進めています.

平成29年九州北部豪雨を対象として,気候変化に伴う積乱雲の形成過程の変化を調べたシミュレーション結果.左は現在の気候条件,右は1980年代の気候条件.左に示す現在の気候条件の方が,積乱雲がより発達しやすく,強い雨を降らせやすい.この事例では海水温の変化にともなう蒸発強化の影響が特に重要であった (出典: Manda et al. 2022).

気候変動に伴う海洋環境の変化

また,近年の気候変動に伴い,海の環境が変化している可能性が指摘されています.海に生きる生物は陸上の生物と同じかそれ以上に,環境変化の影響を強く受けます. 近年特定の魚種が漁獲される海域や藻類の生息域が大きく変化していることが明らかにされつつありますが,海洋環境の変化によって海洋生態系が徐々に変化している可能性も指摘されています.その実態やメカニズムについては未解明の点が数多くありますがこのような海洋環境や生態系の変化を明らかにすることは,重要な研究課題と認識されています

本研究室では,気候変動・海洋生物資源という二つの観点から海の研究を進めています。数値シミュレーション,人工衛星観測等のリモートセンシング,現地直接観測など多様な研究手法を駆使し,気候系,生態系における海洋の役割を研究しています.

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